貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

2綴り 食べちゃってもいいよ(前編)

 

グロかもしれないです。

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短編

 

 

 

 

 

 

 

 

2綴り「食べちゃってもいいよ(前編)」

 

 

 姉さんは美人だ。

 機械ほど精密で、私は妹だけど笑ったところを見たことがない。

 

 

 

 長い黒髪、長い脚。一人暮らしのマンションにいつも違う男を連れ込んでいる姉さん。

 だから、私はお母さんに「ちょっと煮物持って行ってあげて」と言われたとき心底いやな気分になった。

 思春期の女子中学生の私が、行為中に出くわしたらどうするの?

 最悪だ。

 

 だけど、このまま家にいても勉強しろだのなんだのうるさく言われるのはわかっていて、渋々私は持っていくことにした。

 

(どうか行為中じゃありませんように)

 祈りながら鍵穴に鍵を差す。

 ドアノブに袋をかけておいてやろうかとも思ったが、後で痛んでいて母から小言を言われるのも嫌だなと思った。せめて、下駄箱の上においてやろう。

 案の定、玄関にはヒールと男性物の大きなランニングシューズが仲睦まじく並んでいた。最悪だ。

 

 が、私は動きを止めた。

(なんだか変な音がする)

 小刻みにハンドクリーナーを動かしているような音と、時折聞こえる布を破くような音。

(どんなプレイしてるのよ)

 私は興味本位で、手も使わず靴を脱ぎ、忍び足で寝室に向かった。

 扉をゆっくりと開き、片目だけで部屋を覗く。

 

 

 そこには、抱き合う男女がいた。

 女はしっかりと男を抱き、食らいつくようにキスをしていた。

 いや、文字通り食らいついていた。

 食べていた。男の人を。

 

 

 自分の鼓動がうるさくて、覗いた右目の毛細血管が騒がしく感じる。

 

 

「……ひっ……」

 

 

 

 最悪だ。

 私は小さく声を上げてしまい、姉のように見える女は首を360度まわして、私をみつけ、黙視した。私は腰が抜けてしまい、腕だけの力だけで後ずさる。女は男を、プラゴミのようにポイっと投げると私の方へと近づいてきた。

 

 

 口元を拭いながら女は言う。

 

「久しぶり? だっけ? 歩ちゃん? あゆみちゃん? あゆ……? 発音どうだったかしら? あゆみちゃん、あゆみちゃん、あゆみちゃん? ねぇ? あゆみちゃん?」

 

 張り付いた笑顔に恐怖を感じる。

 

 

 

 

 姉さんは美人だ。

 機械ほど精密で、私は妹だけど笑ったところを見たことがない。

 

 

 

 長い黒髪、長い脚。一人暮らしのマンションにいつも違う男を連れ込んでいる姉さん。

 

 

 

■続きます