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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

3綴り 食べちゃってもいいよ(後編)

短編 物語

 

久々の。

 

続いてグロです。

 

 

 

 

 

 

onisisino.hateblo.jp

 

 

 ベランダにカラスが止まった。

 私は気だるげにベッドから起き上がる。何もまとわない姿でベランダの窓をあけた。


「いらっしゃい」


 私は手招きしたけれど、カラスは首を横に振る。


「寒いでしょうに」

「そう思うならお前も服を着ろ」


 カラスが口を開いた。血のように赤い口。


「苦しいのよ。人間の服。できることなら着たくないわ。それに裸でいいのよ、人間の異性は好きでしょ?  裸」


 昨日の男性を思い返すと笑いがこみ上げる。

 少しの上目遣いと、言葉で落ちた。私の尻を追いかけ、体に惚れ、まんまと食べさせてくれた。

 

 苦くて甘くて胸焼けしそう。

 

「貴方も悪魔なら、生ゴミなんて食べないで人間になりすまして新鮮な肉を食べればいいのに。服は苦しいけれど、肉は美味しいわよ」


 カラスは興味なさげに羽を毛づくろいし、言った。


「あいつも食うのか?」


 ベッドで寝ている女の子をくちばしで指した。


「……食べるわよ。そのうちね」

「まずそうだな」

「ええ。まだ青くてまずいわ。処女だもの」

「そうか。本当に美味しいヤツは、食べにくいぞ」


 その悪趣味、ほどほどにしろよ。というとカラスは飛んでいってしまった。


「美味しくって食べにくいってなによ」


 カラスの言葉に私は少しムッとした。美味しいなら食べちゃえばいいじゃない。みんな一緒。みんな肉。同じ養豚場で飼われた豚が個体によって味が違うとでも言うのだろうか。


 ベッドへ向かう。もうひと眠りしたい。

 私は歩ちゃんの頬を撫でた。


「綺麗な肌……」


 どれくらいの異性が、この歩ちゃんの頬に触れただろう。

 髪をなでると甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 

 

 昨日、歩ちゃんに食事シーンを見られてしまった。

 食べてしまえばいいと思っていたから特別なんとも思わない。命乞いでもしてくれれば面白いかと思っていた。


「姉さんはずっと化物だったの?」


 第一声がソレだった。なるほど、命乞いよりも先に興味が湧いたのね。


「ふふふ。あなたのお姉さんは昨日私が食べちゃったわ」


「そう……なの」


 彼女の目は、驚いていた。絶望ではなく、驚き。


「なぁに? 何かおかしいの?」


「私、姉さんが笑うところ初めて見たわ。あなたは姉さんじゃないけど、あなたのほうが人間味があるね。綺麗だよ」


 この状況下で彼女は笑った。


「で、私もその男の人みたいに食べるの?」


 私はなんだか小馬鹿にされたようで、腹が立って彼女に詰め寄る。ぎらりと光る歯を見せて彼女の耳元でつぶやいた。


「そうだっていったらどうするの?」

「いいよ。別に」


 急に彼女は真剣な顔をする。

 

 

「やだやだ。嘘よ。私、あなたなんか食べないわ」


 その真剣な顔がおかしくて私は笑いながら後ろに尻餅をついてみせた。


「大体ね。あんた処女でしょ。青臭くって食べれたもんじゃないわ」


 カチンとした彼女が顔を真っ赤にして言い返す。


「な……、どうせ私は姉さんみたいにモテないから!」


 かわいい……。そう素直に思った。

 コロコロと表情を変える様が、とても不思議だ。

 自然と私は笑っていて、その様子が更に彼女の逆鱗に触れたらしい。


「もーっ!」

「ふふ。そう怒らないで。そのうち恋をするわよ。そうしたらきっと甘い匂いを漂わせて、あなたもきっと美味しそうになる」


 微笑む私を彼女はじっと見つめた。


「変なの」

「何が?」

 

「姉さんより姉さんらしい」


 彼女はうーんと唸る。


「ねぇ、私に見つかっちゃったからどっかに行っちゃったりするの?」

「そうねぇ。あゆむちゃんに見つかって、もうこのへんでご飯も食べにくくなったから遠くへいこうかしらね」

「だよねー……」


 そうして彼女はまた唸った。


「ねぇ、私誰にも言わないからもう少しいてくれない?」


 上目遣いと彼女からするほのかな甘い香り。


「そうねぇ……。どうしようかしらね」


 私はその時はぐらかした。

 

 

 ベッドの中で眠っていたはずのあゆむちゃんがつぶやく。


「私のこと食べちゃっても良かったのに」



   歩ちゃんは苦しそうにそう言った。

   私は聞こえない振りをする。 

 

終わり