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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

8綴り 裏切りの閃光 ①

短編 物語

短編

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三部構成
 
 
 

 

 
 
裏切りの閃光  ①
 
 
 
  いつものバーで一人、カウンター席に座り飲んでいると私の右隣の席を一つ開けて、フェミニン系な女性が座った。
  私はグラスを持ち、口に運ぶ動作をしながら横目でチラりとみる。
(タイプかも……)
 
  横から見て、彼女の体の細さは明らかだった。
  胸はなく、骨と皮。
  おどおどした動作は、無理矢理知らないところに連れてこられた野生動物を彷彿とさせる。
  肩まで伸びた髪を緩く巻き、彼女が動くたびに揺れた。桜色の唇が開くと、小鳥がさえずるような声で彼女は言う。
「マスター、ファジーネーブルください」
  マスターは小さく返事をすると、オレンジリキュールを取りに一番奥の棚へ向かった。
  私はすかさず女性に声をかけた。
「ね、貴女ここに来るのは初めてかしら?」
 
  女性は一度驚いて、体を硬くさせると会釈した。
「はい。初めてなんです」
「隣、席つめてもいいかしら?」
  私は彼女の返事を待たずに席を詰める。見るからに押しに弱そうだ。
 
 
  彼女は金魚のように口をパクパクとしたが、観念したように俯いた。
「私、カンナ。ねぇ貴女、どうしてこんなところに来たの?」
  私はそう言うと彼女の手を握った。
  彼女は頬を赤らめる。まんざらではなさそうだ。
 
 
「元々、嫌いではなかったんですが、色々あって、卑怯なんですが、逃げてきたんです。ここなら私に優しくしてくれそうで……。あ、私、ユリっていいます」
 
  ちょうどそこへマスターが静かにお酒をユリの前にだした。
「ファジーネーブルです」
  私は今あるグラスの中身を一気に飲み干すと、マスターに差し出す。
「私もこの子と同じのちょうだい」
  そう言うとマスターはグラスを受け取り、そそくさと退場した。
 
「全然卑怯なんかじゃないわ。何かあったの?  私に話してみて?」
  そう、全然卑怯じゃない。
  私だって、下心で動いているのだから。
  この店に来たからにはお互い合意の上。だって、ここはビアンバーなんですもの。出会いを求めて下心を秘めて。
 
  私は優しく彼女の左手をさする。
 
 
 
 
  彼女は重々しく口を開いた。
「実は私の旦那が、浮気をしているみたいなんです」