貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

11綴り 童貞は二度死ぬ 前編

 

短編

スマホ推奨

フィクションです

18禁

グロ

 

 

 

 

 

 

 

 

11綴り 童貞は二度死ぬ 前編

 

 

 第二百六条 すべて国民は、三十歳に至るまでにボタンを押さなければいけない。また、この条件を満たせなかった場合爆死するものとする。

 

 

 朝の満員電車で、男子中学生が社会の教科書を開きながら、そう読み上げた。友達らしき別の男の子が思わず吹き出し、笑った。

 

「何度読んでも笑えるよなー」

「だよなー。なぁ知ってるか? 百年年前までボタンを押せないミケイケンシャは魔法使いになれるって言われてたらしいぜ」

「やべーじゃん。本当に使えるようになるから法律でキセイされたんじゃね?」

 ギャハハハと下品に笑う。

 あと半年――、十二月で三十歳を迎える俺は全然笑えないと思いながら聞き耳を立てていた。どうせ、このガキどもも二十歳を過ぎたあたりから焦るだろう。どれ、面でも拝んでやるかと顔をあげると二人共中々整った顔立ちだった。ちくしょう。

 

 

 今から百年前。

 独裁的で、非人道的な法律を可決しなくてはならなくなった。国が運営する病院で出産した子供全員に小型爆弾が仕込まれたのだ。

 その爆弾が公表されたのは一年後のことだった。しかしその時には爆弾が埋め込まれた子供の数は八万人を超え、国民は八万人の人質を取られた状態で公表された。

 会見で総理大臣は言う。

「この小型爆弾は脊髄につながっており、取り外すことは不可能です。また、あるプログラムが組み込まれており、無理に外そうとすると爆発します」

 報道陣の叫び声と、水の入ったペットボトルが開けたまま投げつけられたが、総理大臣はひるまず話し続けた。

「爆弾を解除する方法は簡単です。三十歳を迎えるまでに子作りすることです。またその信号は国に伝達されるようになっており、解除コードとなります」

 非人道的な会見後、総理大臣は爆破テロにより火を放たれ、生きたまま焼き殺された。八万個の爆弾を残して。

 

 

 しかし、そのあとトントン拍子に様々な法律が可決された。

 子作り相手とは必ず婚姻すること。

 離婚は認められないこと。

 

 

 その時の国民は、めまぐるしい変化に誰もついていけなかったという。

   国立病院でのみ、取り付けられていた爆弾も知らぬ間に全国で義務化され、毎日二千人程が出生するこの国で、二千人の人質が絶えず増え続けた。

 増える自宅での出産によりマイナンバーを持たない人が増え、問題にもなったという。しかし時代とともに、麻痺し、認知され、今ではこの国の七十九%の人々が脊髄に爆弾を抱えている。

 三十歳で爆発するという大きなデメリットを除けば、制度や法律は国を豊かにした。子供のうちから真剣に結婚を考え、不純な犯罪は減り、夜の店は軒並み店をたたんだ。金のない者、魅力がない者、社会的に地位のない者は爆死し、常に優れた個体同士が結ばれた。また、人よりも少し劣ったものは努力する。

 国は素晴らしい国に生まれ変わった。しかし、国民は何とも言えない息苦しさを感じていた。

 

 

 俺、斎藤冬一郎もその一人である。

 

 

 顔もルックスも悪くない、それなりにモテた俺だが、若い頃の俺は一番ハードルの高い恋愛結婚を夢見ていた。「どうせ結婚するなら大好きなゆみちゃんと!」しかし、ゆみちゃんは競争相手が多く、毎日のように告白をしたが思いは結局届かなかった。ゆみちゃんが結婚したと聞いて、夢から覚めた時には二十五歳をとうに過ぎていた。

 ファミリーワークという国が運営する結婚相談所に通ったが、どれも好みの子はおらず、ここのところ毎日のように婚活パーティに通っている。

 

 

(そろそろ、妥協しないとな……)

 

 プライドも命には変えられない。

 

 

 まだバカ騒ぎをしている男子中学生を横目で見ながら、中学生にもどりてぇと思ったその時、ひとりの女子高生が満員電車の中、人を押しのけながら男子中学生の前にやってきて、手に持っていた学生鞄を振り下ろした。鈍い音が響く。

 

「っい……てぇ! なにすんだよ!」

 涙目を浮かべる男の子の胸ぐらを女子高生は掴んだ。

「人の気持ちも考えられねぇクソガキは爆死しろ!」

 それだけ言うと壁に男の子を叩きつけ、ついた駅で降りてしまった。

 俺は女子高生に釘づけになった。

 ポニーテールからのぞくうなじにゾクリとする。気がつくと俺は降りる予定でもない駅でおり、彼女を追いかけていた。

 

 

(あの子だ! 俺はあの子と結婚したい! 土下座してでも結婚したい!)