貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

17綴り 強欲なATM

短編

スマホ推奨

 

 

 

 

 お金を下ろそうとコンビニのATMに駆け込んだ。

 入ってとりあえず斜め奥を目指す。ATMがある場所はどのコンビニも似た様な場所だ。


 俺は陳列棚の隙間から先客に気づいた。最近では珍しい、ストレートロングな黒髪にセーラー服を来た女子高生だった。赤いマフラーがよく映える。俺は特に何も考えず彼女の斜め後ろに並んだ。


(まぁいいか。それ程急ぎでもないし)


 今日はこないだの合コンで引っかけた尻の軽そうな女とデートだ。名前すら覚えていないが、まぁ、今日会えば二度と会うこともないだろう。

 そんな風にどうでもいい事を考えていた。


 ふと、前にいる女子高生の手元をみた。暗証番号押しているところだった。

(0525……0525)

 何となく頭の中で繰り返す。


 特に意味はない。ただ、「あ~オカンの誕生日と同じ番号だなぁ~」くらいに思った。


 女子高生が去って、さぁ俺の番だとジーパンのポケットから長財布を出した時だ。女子高生が丸めたと思われる明細書が札用の開閉口に転がっていた。


 指先でつまみ、好奇心から開く。

(世の女子高生の貯金っていくらくらいのもんかね)



 そこには今まで見たことのないほど、ゼロが並んでいた。

(い……いっせんまん……)

 驚きの余り、じりじりと明細書を見つめる。何度数えても8桁あった。



 顔をあげた。

 女子高生は肉まんを買って、店を出たところだった。

 ふと、思った。

 


(あいつを殺したら遊んで暮らせる)

 

 

 そう、たとえば彼女の後を付け回し、人の目がつかないところで襲ってもいい。


 暴れるようなら数発殴って、そのすきに学生かばんから財布をだし、キャッシュカードを取り出す。暗証番号は0525。ばっちり覚えている。


 さて、そのあと俺は何食わぬ顔で銀行に行き、全額降ろすだろう。


 ボストンバックパンパンにお金を詰め込んで――詰め込んで――詰め込んで……。

 

 はて、俺はどうして銀行の前にいるんだ?

 なんでこんなにボストンバックが重いんだ?

 滝のような汗が次から次へと流れ落ちる。



 咄嗟に走った。

 まずは自宅に戻ろうとした。鍵穴に鍵をさして、立ち止まる。

 俺……監視カメラに写ってるよな?

   コンビニ、銀行、最近では商店街にも監視カメラはあるらしい。確実に俺の姿は写っていた。

 俺は鍵を回さず、抜き、しまう。

 

(どこにいこう、どこに)

 

 

 考え付いたのは中学校の裏山だった。忍び込み、ガキの頃遊んだ洞穴にはいる。

 そこで俺は息を切らしながらボストンバックを抱きしめた。

 

 

 ボストンバックを抱きしめていたんだ。


 だが、抱きしめていたのは女子高生の頭部だった。


「ぎゃ!」


 驚き、放り投げる。

 赤いマフラーにくるまれた、まだ生暖かい女子高生の頭部。

 伏せ目から、生前はまつげが長く美女だったんだろうなぁと思った。

 ただ淡々と。そう思った。

 意識が急に遠のきながら。

 

 

 俺は気を失っていた。

 目が覚めると、変わらず裏山にいた。

 まるでレイプでもされたように服はめった刺しにされていた。

 訳が分からず財布の中身を確認する。不思議なことにお金は何もとられていない。

(昨日あのままデートに行って、酔いつぶれたのかな?)

 腑に落ちないままコンビニへ向かう。ATMでお金を下ろそうとしたときだった。

 残高がなかった。

 

 

「夢代ご馳走様でした」

 ハッと振り向くと、昨日見た女子高生が俺をみて微笑んでいた。