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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

25綴り 花澤千夏は聡明で美しい・1

短編 物語

 

 18日まで毎日更新

 グロ描写あり

 自己責任でお読みください

 

 

 

 

 

 今日もとっくり日が暮れてしまった。

 体を引きずりながらコンクリートの上を歩く。

 スーツはよれよれ、靴底はすり減っている。

 

「流石に二徹はしんどい」

 

 そう独り言を呟く。

 こんな日には、辞めたはずの“悪癖”が恋しくなる。

 けして中二病なんかじゃない。右手が疼くのだ。

 

 だめだ。俺はもう止めたんだ。

 

 そう思ってみても、人通りの少ないこの路地で人を探してしまう。

 女を、探してしまうのだ。

 女。

 若ければ若い方がいい。

 

 

 ふと、目の前に女子高生の後ろ姿を見つける。

 さっきまでいただろうか?

 この一本道の路地を、同じ方向、同じスピードで歩いている。おかしい。

 それに、いま時は珍しい黒のセーラー服に、黒くて長い髪だ。しかも、クソ暑い夏の夜に、長そでときた。

 見ているこっちが暑苦しい。

 

 

 しかし、その黒いスカートから見えるふくらはぎが、あまりに白くて、堪らない気持ちになる。

 

 

 ああ、もう、どうでもいいと。

 

 そう思う。

 

 

 多少気になることがあったとしても。

 今は、この滾る気持ちを静めてしまう方が先だと。

 

 

 俺は早歩きをして、彼女との距離を詰めた。

 さっきまでの疲れが嘘のようだ。

 

 

 俺は彼女の小さい肩に触れた。

 そして、こう言うのだ。

 お譲ちゃん、こんな夜中に一人で歩いてちゃ危な

 

 

「お」

 

 

 

 俺は刺された。

 彼女の肩に触れたと思ったが、触れた瞬間刺されていた。

 

 ピンクのボールペンが、右手のひらを貫通している。

 どんなマジックだろうか。

 刺さった痛みはなかった。

 ただ視覚で確認できた時にはもう、冷たさの次に、焼けるような痛みが襲っていた。

 

 

 いや、しかし、なにより。

 

 彼女のこの表情である。

 ただ、冷たく、ゴミを見るような目で、痛みにもがき両膝をつく俺を見下していた。

 

 人はこうも冷たくなれるモノなのであろうか。

 人を刺して眉ひとつ動かさないモノなのだろうか。

 

 

「きゅ、急に何をするんだ……」

 

 絞り出すように声を出した。

   あたかも、俺は被害者だという様に。

 彼女はそれでも、顔色を変えない。

 何でもないような顔をして、髪を耳にかけた。

 

「NP13456」

 

 彼女が発した言葉だ。

 

 彼女が発した言葉は「ごめんなさい」でも「大丈夫ですか?」でもない。

 俺に対する脅しだった。

 絶句である。

 

 

「うわあああああああ!」

 

 俺は大げさに叫んだ。

   彼女はサイコパスだと、普通ではないと。そう思い、完全なる被害者に徹することにした。

 

「だ、誰か!  助けてくれ!  殺される!」

 

 脂汗で額を濡らし、のたうち回る。

 彼女は依然として、俺を眺めていた。

 そうして、片足をあげる。その時、彼女のスカートの中身が見えたのは内緒だ。

 

「うるさい」

 

 そう言って、彼女は虫でも踏み潰す様に、俺の右手のひらを踏みつけた。

 なんて綺麗で白い足だろうか。

 

「ぐああああああ!」

 

 容赦なく彼女は踏みつけた右手を地面にこすりつけるようにかかとで踏み上げる。

 流石に痛い。

 汗が目に入り、彼女の姿を正しくとらえることが出来ない。

 彼女は俺の手を踏みつけたまま、赤いスカーフをほどき、俺の前へと落として見せた。

 

「いつまで痛いフリをしているの? さっさとボールペンを抜いて、私の奴隷になりなさい」  

   彼女は確かにそう言った。 

 

 

 

 

明日の更新は22時頃を予定しております。