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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

31綴り 花澤千夏は聡明で美しい・7

 

グロあり

自己責任でお読みください。

本日でラストです。 

 

 

onisisino.hateblo.jp

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 この状況をどう切り抜けよう。

 包丁を持っているのは婆さん、しかし、包丁を持っていないとはいえ力があるのは爺さんの方だろう。

 出口は一つしかない。

 

 一番最悪なのは俺が爺さんに抑えられ、婆さんに刺されることだ。

 しかし、本気にするのは正気の沙汰ではないが、“物語りの終わりを知っている”という千夏が、俺に言った言葉通りであるならば俺は二人を捕まえられるんだろう。

 

 そうすればハッピーエンドだ。

 

 ……ハッピーエンド?

 なぜだろう。違和感がある。

 なにか、なにかが頭の中で引っかかる。

 

「何をよそ見しているんだ」

 

 突然婆さんが包丁を突きたてて突進してきた。

 なんてことはない。

 手首をひねり、一気に組み伏せる。

 

「婆さんを離せ!」

 背後から爺さんが俺の首を締めあげた。

 想定していた最悪のシチュエーション。

 流石に二人相手はきつかった。

 

「千夏……、っ逃げろ!」

 

 しかし、これが最も彼女を安全に逃がせる方法だった。

 爺さんに首を締められ、婆さんを組み伏せていた俺の手が緩む。

 婆さんはもぞもぞと立ち上がろうとした。

 

「早……く」

 苦しくて、目の前が真っ白になる。

 落ちていく。




 

 

「逃げないわよ。これは運命なんだから」

 



 落ちていく瞬間、彼女の声が聞こえた。

 真っ白な視界の中で、彼女が包丁を拾い上げ、俺の背後で爺さんを切ったのだ。

 婆さんの瞳孔が目一杯開かれたのを俺は見る。

 俺の首を締めていた手は解かれ、脳に酸素が補給されていく。

 その回復のタイムラップの中で婆さんは完全に立ち上がった。 

 

「き、きさまぁ……!」

 

 彼女に向って走っていく。

 このままでは、彼女が危ない。

 咄嗟にそう思って、右手に刺さったままのボールペンを引き抜き、俺は倒れこむように婆さんのふくらはぎを刺した。

 

「ぎぃゃああぁぁああああぁ」

 

 響く断末魔。

 顔をあげると彼女が不思議な顔でこちらを見ていた。

 

 そう、彼女は包丁を持っていたのだ。

 彼女が危ないなんて事はない。

 

 彼女は泣きわめく婆さんに目もくれず、俺に近寄ってきた。

 

「未来が変わったわ。お婆さんが私から包丁を奪い返して、私は彼女に殺される予定だったの。そうして、貴方に耐えがたい不幸が訪れる。そのはずだった」

 

 そのために、私は抵抗もしないのに……と彼女はそう続けた。その顔はどこか儚げだ。




 

「それ、あげるわ」

 

 彼女は細く白かった指を血で染めながら、俺の手に巻かれたスカーフを差した。


 そうして彼女は俺と婆さんを地下室に残したまま去って行った。

 

 

 

 彼女は言った。

 全ての物語りを神様に聞いていると。

 彼女は言った。

 人の不幸を見続けて、人になるかを決めると。

 

 

 

 花澤千夏はサイコパスだ。

 だが、聡明で美しい。



    彼女が何者か、結局わからなかったが、俺は、彼女には人間にならないで欲しいと、そう思った。