貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

32綴り 嘘つきばかりが駆けていく

短編
酒が回っている



 
 
 
 

  真昼ちゃんは、八方美人である。
  僕が毎朝起こさなければ起きないくせに、学校ではキリリとしているからだ。
  真昼ちゃんは、八方美人である。
  外では、にこやかに笑うのに、家に帰るとゼンマイが切れた人形の様に玄関先で倒れるからだ。
  真昼ちゃんは、八方美人である。
  僕がいないと彼女は食事をとることもできない。
  ベッドで寝ることも、服を着替えることも、歯を磨くことすらできないのである。
  彼女は学校へ行き、日中を学校で過ごすことで精一杯だ。
  学校で完璧に過ごすことで精一杯なのだ。
  たったそのちっぽけな事に、彼女は命を燃やしている。
  そんな彼女をみんな好きだという。
  欠陥な彼女を。


  みんなは何を見て、彼女から何を感じて、彼女を好きなのだろうか。
 
  彼女が帰宅し、玄関でぶっ倒れ、白目をむく様を見ても、彼女の事を好きでいられるのだろうか。
 
 
  僕は彼女のことが、好きである。
  でも、もし、彼女に欠陥がなくて、本当に完璧な人間であるならば、僕は彼女を好きではなかっただろう。
 
 
  彼女が末長く欠陥であります様に。
  僕はそう願いながら、ポケットに入った骨をなぞった。
  彼女の両親だった白い骨を。