読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

雑記 日記と死の話

どうでもいい雑記です。

 

 

 

先日仕事であるおばあさんの引っ越しを手伝うことになった。

普段は事務仕事と雑用が多い私なのだが、その日はどうしても人が足りなくて行くことになったのだ。

そのおばあさんとは何度かあったことがあり面識があった。

足が自由に動かないそうで、最近は特に節々が痛み体調が悪いらしい。

 

私は神経質なところがあって、人間の体臭や独特な人間の匂いが苦手である。そのため、その日はマスクをして行った。

 

私は淡々と作業をこなしていく。

作業が終わりに近づいたので、社長に代金をいただいて領収書を渡すように言われ、おばあさんのもとに向うことに。

おばあさんは、ずっと寝たままであった。

 

「すみません、そろそろ作業が終わります」

 

私の言い方はとても、事務的だったと思う。

なるべく不愉快にはさせないように普段から気をつかっている“つもり”だが、それでも冷たいんだと思う。人として。

 

代金をいただいて、領収書を書いた。

おつりとともに領収書を渡して去ろうとすると、腕を掴まれた。

 

しわがれた声でおばあさんは言う。

「私はよくなるかねぇ」


私の頭はフリーズした。

マスクをしているため、わからないだろうが汗は吹き出て、完全に動揺している。



何と答えればいいだろう。

自分の祖父母ともまともに喋ったことがない自分にとって、返答に戸惑った。

 

(それは引っ越したら体調がよくなる? と聞いているんだろうか? 何に対して良くなる? 仮にそうだったとして、この場で“大丈夫ですよ”なんて無責任なことをいっていいのだろうか?  医者でもないのに?)

 

頭の中を色々な思考がめぐる。

私の上司が近づいて、腕を掴むおばあさんの手を私から離すと握りしめた。

「大丈夫ですよ」

上司は優しい声でそう言った。

 

「死にたくない。死にたくないよ……」

おばあさんはボロボロと突然泣きだした。

私は呆気にとられてその場で硬直する。

 

 

生きていくことは死んでいくことなんだと、その生々しさを実感する。

と、同時に。

その淡々とした自分の冷たさが凄く嫌だな、と思った。

それは、年齢が若いから、なんていいわけでは効かないくらい、ダメなんだろうとマスクの中で唇を噛んだ。