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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

36綴り 男の子が女の子を好きになれるって本当ですか?

短編

 

 

 

  

 

 おしゃれなカフェで下品な言葉が飛び交っている。


 男三人が丸テーブルを囲み、こないだの合コンがどうのだとか、抱き心地がこうだったと言い合っていた。


 その中でも顔が一番整った黒髪の男が言う。



「そーいやさ、こないだナンパしたんだけどさ。ちょっと見てくれよ」


 男はおもむろにスマホを取り出して、男たちに画像を見せた。



「うっわ。めっちゃ清楚系。めっちゃ美人じゃん」

「だろ。でも、彼氏持ち」

「さいってー」


 金髪の男がケラケラと笑いながらそう言った。

 それをみた黒髪の男は頷く。


「だよなー。マジそういうのないと思うわ。浮気する女なんてさいてー。ぜってー彼女にしたくねーわ」


「お前に言われたくねーよ」


 とさっきまで笑っていた茶髪の男がそう言って、黒髪を指差しながら金髪をみた。


「こいつ、浮気して前の彼女と別れたんだぜ?」

「お前の方が最低だわ」


 金髪はツボにはいったらしく、テーブルを叩きながら笑う。


「ちぇ。俺はいいんだよ。それにそろそろ連絡がくるはずなんだ」 


「誰から?」


「前の前の元カノから。セフレになってくれって来るはずなんだよね」


 そういって自信ありげに言う男を二人は馬鹿にしながら、カフェの雰囲気をぶち壊していった。


 人々が嫌な目線を彼らに送った。


 ただ一人。黒髪の後ろで、背を向けて座っている赤毛の女性だけが、自分のスマホをまっすぐに見つめていた。

 

ー ー ー ー ー

 

 その夜の事であった。

 黒髪の男は、あのあと飲みに行き、今は酷く泥酔している。

 路地を少し入ったところで、赤毛の女が立っていたのを少し不思議に思いながらもその場を通り過ぎようとした。

 

 いい匂いがする女だと思った。

 ふと顔をあげ、女の顔を覗き見る。

 

 きれいだ。

 

 酔いが醒めるほど綺麗だった。

 少し口角のさがった口、見下すような目。

 

「あの……」

 気がつくと声をかけていた。

 

「はい?」


 女は少し驚いたようで、眉がぴくりと動く。

 

 

「一目ぼれって信じる?」


 男はそう言った。

 女は少し悩んだ風に小首を傾げると


「信じません。私からも聞いていいですか?」


 と言った。

 

 脈は、なくはない。ということだろう。

 男は心の中で喜んだ。

 男はよくナンパをする。

 本当に脈がない時は無視されるか、酷い時は罵倒されるため、相手にされるだけ俺に気がある、と踏んだのである。

 

「なになに? なんでも聞いて?」

 

 そう微笑んで男が言うと、女は男をまっすぐ見て

 

「男の子が女の子を好きになれるって本当ですか?」

 

 と言った。

 

「は?」

 突然の事で、男は言葉が漏れた。

 

「変な事を聞いているでしょうか?」

 赤毛の女は、少し残念そうだ。

 

「い、いやいや、全然変じゃないよ」

 と、手を振って男は否定した。

 

 少し変わった子だなと思いながらも、一度きりの関係でもいいかと思った。

 男は軽く咳払いをする。

 

「そうだなぁ。今まさに、僕は君に凄く興味があるけど……」

 

 と言って彼女を見た。

 きれいな足、白い肌、整った顔立ち。

 一度だけじゃもったいない気もするが、まずは落とさなければ話にならない。

 

 

「そう……」

 しかし女の反応は薄かった。

 

 

「ちょっと、俺、飲み過ぎちゃって気分悪くてさ。ちょっと休みながら話せないかな?」

 

 これでだめなら諦めよう。

 男はそう思ったが、女はあっさりホテルまでついてきた。

 男は先にシャワーを浴びると言い、見えないところでガッツポーズをする。

 

 

  浴室からでると女が男のスマホをいじっていた。


「な……」


 絶句する男に気づいた女は頬笑み、画像をスクロールしながら口を開く。

 

 

「誰が一番好きですか?」


 わなわなとする男。


「それとも皆好きですか?」


 女は男を気にせず続ける。

 


「男の子が女の子を好きになれるって本当ですか?」

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 

男の人に、声をかけられると私は凄くへこみます。