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貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

38綴り 続・童貞は二度死ぬ(前編)

短編

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胸糞

18禁 

 

 

 

onisisino.hateblo.jp

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 俺はため息をついた。

 夕日色に染まる車内。

 山手線は今日もぐるぐると同じ場所を回っている。

 何週目だろうか。ただ、帰りたくないと足の裏が床から離れないでいた。

 

 

 帰宅すれば不味い飯を作る不細工な嫁。

 嫁に似た不細工な娘。

 離婚したくても離婚は出来ない。

 

 

 

 そういう、法律だから。

 

 

 

 

 全ての国民は、三十歳までにセックスをしなくてはならない。でなければ、脊髄に埋まった爆弾が爆発する。

 それがこの国の少子化を防ぐ強硬手段だった。

 さらに、一度結ばれたものとは一生添い遂げなければいけない。

 遠い昔「結婚は墓場」だなんて言った人が居たらしいけれど、本物の墓場になってしまった。

 

 

 俺のように、高校生の時に欲望から先走り、吟味しなかった人間は更に“墓場”だろう。意外とそういう人は多いと聞く。若気の至りというやつだ。


 しかし、今年32歳になった俺は冷静に考える。


 30歳まで童貞を貫くと爆死するらしい(とはいえ、実際俺も目の前で爆死するところをみたことがある)が、適当に選んだ相手と一生一緒にいるというも爆死とは言わないだろうか。



 なあんて、いいわけだろう。

 

 


 ただ、たった一度でもいいから、本気で恋愛をしてみたかったと思う。

 恋愛をせず、勢いで今の嫁を抱き、俺は人生を棒に振った。

 高校生の時の俺は、将来の“童貞で死ぬかもしれない”未来に怯え、欲望に従ったのだ。

 そうして、俺は“死の恐怖”から逃れられたが、この先も永遠と続く“地獄”を生きていかなければならない。

 


 

 電車にゆられながら俯いていると、ふとオレンジの香りがした。


 顔をあげる。


 髪を高くに束ねた(所謂ポニーテイルだ)女の子が、俺の目の前で吊皮をもっていた。

 


 有名な私立高校の制服をきている。

 

 

 ゆっくりと視線を上にあげていくと女の子と目があった。

 

 

 涙ぼくろが特徴的で、どちらかというと気弱そうな顔をしている。

 見惚れていると、女の子は小首を傾げた。

 



「どうかされました?」

 



 育ちがいいのだろう。

 きれいな言葉使いだった。

 





「いや、君があまりにも可愛くて……」

 


 気がついたら俺はそんな風に口走っていた。

 

 

 

 

 

続く。