貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

43綴り 性に抗い、苦しめッ! 女子高生ッ!

 

 

短編

続くかも。

淡々エロなので自己責任でお願いいたします。

 

 

 

 

 

 高校一年生の夏、初めて付き合った彼氏と性交をした。

 

 

 貫かれる痛みに、さっきまでの興奮は冷めて「痛い」と伝えると「次第によくなるから」と言われ、“異物”を抜かれることは彼が達するまでなかった。

 

 

 私はというと、結局最後までよくなることはなかった。

 

 

 ただただ、汗を流しながら性欲を満たそうとする彼が気持ちが悪いと思い、終わった後に泣きながら「別れたい」と言った。

 

 

「な、なんで? 嫌だった? ごめん! 次は、ちゃんとするから……ほんとごめん! 余裕なくて」

 

 

 次なんて、ない。

 もうしたくない。

 

 そう思った。

 彼の顔も見たくないと。

 

 

「私こそ、ごめん……。ほんと、もう無理で。嫌いとかじゃなくて無理で……。一緒にいたくない」

 それが、私の精一杯の拒絶だった。

 

 

 彼は泣きそうになりながら私を抱きしめて「なんで? なんでもう無理なわけ? 一回失敗しただけで次も与えられないの?」と言った。

 

 だけど、私は彼の言葉など頭に入ってこなかった。

 

 

 ただただ、嫌で。

 体中に現れた鳥肌が、私の答えだった。

 

 

 その日の夕食。

 

 父が食事をする姿を見て、吐いた。

 父がポークチャップを美味しそうに頬張る姿に、性交中の彼を思い出したからだ。ちょうど、あんな目をしていた。

 

「げぇ……うぇっ……ぉ……おえー……」

 

 

 テーブルに吐瀉物をぶちまけ、両親を唖然とさせた。

 楽しいはずの夕食は終わってしまった。

 両親はなんの疑いもなく、風邪気味なのだろうと私に優しくしてくれた。

 罪悪感ばかりが胸を突く。

 

 

(性行為は食事なんだ……。私はただ、食べられるもの)

 

 快楽を感じられなかった私は、おかしいのかもしれない。

 

「好きだからエッチがしたいって、どんな理由よ……」

 

 

 関連性がない。

 好きなら言葉にすればいい。

 お互いがお互いを認識しあえればそれでいい。

 それじゃあ何故ダメなのか。

 

 

 私はその夜、自分を正当化する言葉を探して中々寝付けないでいた。

 

 

 

 

 学校へ行ったのは翌々日のことだ。

 

 元カレへとなり下がった彼からは、ひっきりなしにメールが着ていたが見るのもやめてしまった。

 

 登校して、彼が私の席までやってきたが、冷たい目を向けると何も言わず去っていった。

 

 

(私ってば最悪な女だな)

 

 

 そう思っても、一度“無理”になってしまうとどうにもこうにも脳が受け入れなかった。

 しばらくは男性と話すだけで鳥肌が出てしまうほど、俗にいう“男性恐怖症”になった。

 

 

 

 高校三年の春。

 教育実習生の桜田晴美と友達のように仲良くなった。

 

 休みの日には車で迎えに来てくれて、二人、ぶらぶらして遊んだ。

 

 

 晴美と遊ぶのは楽しい。

 先生、というほどお堅くも無く、同年代よりも大人っぽくって、何より可愛かった。

 

 

 いつも違うヘアアレンジに、甘い匂い。

 

 

「晴美のこの甘い匂いって何なの? 私、好きだな」

 

 

 

 適当に入ったカフェで向かいあいながら、唐突にそういう。

 私は生意気ながらも、晴美を呼び捨てていた。晴美も私のことを学校以外では呼び捨てで呼ぶ。

 

 

 晴美はゆるいカールのかかった髪を耳にかけながら微笑んだ。

 

「これね、ヘアコロンなの。香水って好き嫌いがあるけど、ヘアコロンなら女の子っぽいしいいかなって」

 

「うん。いいと思う。私もつけてみたいな」

 

 

 何の気なしにそういうと、晴美は少し考えるようにテーブルの上で組んだ指を見つめ、口を開いた。

 

 

「ウチ、来る? ヘアコロン、沢山あるし……。気に入ったのあげるよ」

 

「いいの……?」

 

 

 晴美の好意的な気持ちにはなんとなく気付いていた。

 それが少し“異質”な形であることもなんとなく理解していた。

 

 だから、そのあと晴美の家に行って押し倒された時にも(ああ、やっぱりか)と思った。

 

 

 

「好き……」

 

 晴美が私の上でそう呟いた。

 私はなにも答えなかった。

 

 拒絶を示さない私に、いいように解釈した晴美はただ「私に任せてくれればいいから」と言って、私のブラウスに手を掛けた。

 

 

 晴美は優しかった。

 私の表情を伺いながら、嫌なことは絶対にしなかったし何より“痛く”なかった。

 

 

 私は行為後、天井を見ながら晴美に「好きだよ」と言った。

 

 好きだよという言葉の前に心の中で(晴美は私に優しくしてくれるから)と付いたきがする。

 

 そんなことも知らず、晴美は裸体を丸め、胎児のようにうずくまると嗚咽して泣いた。

 

 

「嬉しい……嬉しい……」

 

 と言って泣いた。

 

 

 晴美の行為は、食事ではないと思った。

 だから受け入れた。

 

 

 晴美の生産性のないソレは「好きだからエッチをする」ということに当てはまるのではないかと思った。そこになんとなく目には見えない“愛”がある気がしたし、もう少しで何かが理解できそうな気がした。

 

 

 そんな晴美との関係は卒業間際まで続いた。

 

 ただ、目的であった見えない“愛”は結局見つからず、体を重ねても重ねても虚しさだけが残るようになって、次第に私から拒絶するようになっていった。

 

 

 凹と凹じゃなにも埋まらないのか。

 そんな馬鹿らしいことも考えたりした。

 

 

 

 ある日のことだ。

 

 下校時間に同じクラスの女生徒に声を掛けられた。

 髪色の明るい、スカートが短い女生徒。

 

 驚くことに、名前が思い出せない。

 

 

「なぁ。話あんだけど?」

 

 いかにも頭が悪そうで、少し感情が顔に出る。

 

 

「そんな嫌そうな顔すんなって。奢るからさ。それに大人しくついてきた方がいいとおもうけど」

 小声で「桜田のこと、バラされたくなかったら」と言われた。

 

 

 私は溜息を漏らし、立ち上がる。

 彼女の上履きに『篠田』と書いてあるのをチラリとみて「わかったよ。篠田さん」と言った。

 

 

 篠田が向かったのは駅前のファーストフード店だ。

 奢ると言われたが、私は拒否し、ホットコーヒーを自分で購入した。篠田は細身の割にセットを頼み「あ~、腹減った~」と言って、店員から受け取るなりポテトを口に運んだ。

 

 

桜田とお前って出来てんの? つうか、ガチレズ?」

 

 席に着くなり、篠田は下品にもそう口にした。

 面食らった私に篠田は申し訳なさそうに「ごめんごめん、あたしこれでも偏見ねータイプ。先週桜田とキスしてるお前を見かけたからさ。ただの興味で声かけただけ。人にも話さない」と謝る。

 

 

 私はホットコーヒーをちびりと飲むと「わからない」と言った。

 

 

 私の反応に篠田は大げさとも言えるほど「はー? なんだそれ」と体を倒して見せる。

 

 

「晴美は多分、そう。私はわからない」

 

「だからわからないってなんだよ。好きだからキスするんじゃねーの? それともお前は誰とでもするやつなん?」

 

 

 篠田はズケズケものを言う。

 そんな篠田に私は居心地の悪さを感じていた。

 

 

「誰とでもは、しない。でも、私は、自分のことがわからない」

 

 篠田は黙って聞いていた。

 もっと詳しく話してほしいというように。

 私は、胸の奥に沈んだ汚いものを吐き出すように言葉にする。

 

 

「異性も同性も、体を重ねてると愛情がわからなくなる。体を重ねるまで、好きだな、大事だなって思うのに、体を重ねることに意味がみいだせない。理解できないし、寂しさが、埋まらない……」

 

 

 誰にも言ったことがない気持ち。

 それを、何も知らない篠田にぶちまけた。

 

 

 篠田は嫌な顔一つせず、頼んだコーラをストローで吸うとなくなったのか、下品なズルズルという音をならした。

 

 

 

「なんかよくわかんねーけどさ」

 

 

 篠田はストローから口を離すとそう前置きをした。

 

「理解なんてできるわけなくね?」

 

 そういって頭を掻く。

 

「血の繋がった親でさえ、あたしの考えてることわからないのに、他人が理解できるわけねーじゃん。他人が唯一出来ることは、相手のことを理解したいと思うだけだろ」

 

 

 篠田は私をまっすぐ見る。

 

 

「お前はなんかに不満を持ってるみたいだけどさ。お前は人のこと理解しようとしたの? そうやって、同性とか異性とかいって分けてるだけで、セックスを汚いってにげてるだけで、人を好きになったことないんじゃない? 理解しようとする努力を怠ったんじゃない? ただ、愛して貰えるから一緒にいて、その事実に嫌気がさして、何かを憎むことで誤魔化してんじゃねーの?」

 

 

 私は気が付いたら、薄ら笑いを浮かべる彼女にまだ熱いコーヒーを浴びせていた。

 

 

 

 

おわり