貴方を思い出すと私は哀しい

呉西しの さんが、綴ったり綴らなかったり。ノベルとか小説とか書いています。御用の方はonisisino@gmail.com まで。HP: http://onisisino.xyz

48綴り 私の子供がかわいそう。

 

短編。

 

 

 

 

 僕の彼女はたまに、深夜に目を覚まし、シクシクと泣いていることがあります。

「どうしたの?」と聞くと「私の子供がかわいそう」と言うんです。

 

 僕はそんな彼女を抱き寄せます。

 小さな肩。白い肌。セミロングの茶色い髪。

 僕の自慢の彼女です。

 

 

 彼女は幼少期、暴力の絶えない家庭で育ちました。

 やがて離婚し、何度も親権を押し付け合われ、両親の間を行ったり来たりしたそうです。

 彼女はいらない子だと言われてきました。

 

 言葉の呪縛というのでしょうか。

 だから彼女は酷く自らにコンプレックスを抱えていて“いらない子”が子供をもつなんて……と戒めていました。

 僕は幸せになっていいんだよ、と言うのですが。

 なかなか簡単に気持ちを割り切れないようでした。

 

 

 彼女は“いもしない子供を想って”夜な夜な泣くのです。

 

 僕は彼女を抱きしめながら「大丈夫だよ」と呟きました。

「僕たちの間に子供はいないよ。かわいそうな子供はいないんだよ」

 そう伝えると僕の胸の中で彼女の体の力がフッと抜けました。

「よかった……。夢かぁ」

 彼女は鼻をすすって、僕を見上げるとヘラりと笑います。

「夢でよかった。かわいそうな子供はいないんだね」

 そうして彼女は布団に帰っていくのです。

 

 帰って消えるのです。

 彼女に“かわいそうな子供”がいないように。

 僕にも“頭のおかしい彼女”はいません。

 

 よかったなぁ、よかった。

 かわいそうな女の子はこの世界のどこにもいないのです。

 

 また次の夢まで。