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52綴り だだだだだだいじょうぶ? (ドモり)

 

短編です

 

 

 

 明子が美術室に飛び込んできた。

 扉は、勢いよくあけられたので大きな音がたつ。

 みんなが手を止めた。

 放課後、みんな思い思いにイラストを描いていたのに、今では一点に集中している。

 

「明子、どうかしたの?」

 

 誰かが言った。

 明子は、嗚咽交じりに口を開く。

 

「振られたの」

 

 みんながペンを放り出し、彼女に群がった。

 

「村田くん?」

「告白したの?」

「明子、かわいそうに」

「がんばったね、エライね」

 

 震える明子の背を、優しくて美人な綾香が撫でる。

 かわいそうに、かわいそうにと。

 私はそれを遠目で眺めていた。

 

 明子、告白したんだ。

 あーあ、出遅れた。

 

 そんなふうに、思いながら明子を見る。

 じっとりとした視線を送った。

 

 むしろチャンスかな。

 今、告白したらイケるかな。

 明子、好きだよって言ったら。

 

 いや。

 

 何考えてるのって怒られるかな。

 そもそも、あの輪に入ればよかった。

 そしたら私が明子の背を撫でられたのに。

 

 でも想像したら笑えた。

 私、きっとドモっちゃうな。

 優しくて美人な綾香みたいに「大丈夫?」って滑らかに言えない。

 だだだだいじょうぶ? ってきっと声が裏返るんだろうな。

 

 

おわり